爪も蹄も手入れが大切

 |
ヒョウの伸びた爪
|
人間が爪を持つように、動物も爪を持っています。トラやライオンなどのネコ科の肉食獣では、獲物を捕らえ、木に登ったりするには、爪は欠かすことはできません。また、草食動物のシマウマやヒツジ、クロサイなどが持っている蹄は、爪が早く走るために進化したものです。
彼らは、野生では、エサを求めて1日に何十キロもの長い距離を移動したり、獲物を捕まえるために走ったりしていますが、動物園ではエサは決められた日や時間に与えられるので、エサを探す必要もなくなるため、走ることや、歩くこともあまりしなくなります。そうすると、爪や蹄が伸びてくるので、飼育担当者は爪研ぎ用の木などを獣舎に入れたり、放飼場に小石をまいて蹄が小石との摩擦で削れるようにして、爪や蹄が伸びないようにしています。肉食獣の爪は鉤型をして曲がっているので、伸び続けると曲がって自分の手に刺さります。放置しておくと歩けなくなります。また、刺さった傷口から細菌が入り化膿することもあります。同様にヒツジやヤギでも蹄が伸びると、蹄が変形して、蹄が破れてそこから細菌が侵入して化膿したり、蹄が変形しているのに無理に歩こうとして足の関節に負担がかかり関節炎などの病気を発症して歩くことができなくなります。
しかし、飼育担当者の気も知らず、全く爪研ぎをしなかったり、他と比べて蹄がよく伸びる動物がいます。草食動物ではヤギ、ヒツジ、バーバリシープ、肉食獣ではアムールトラ、ヒョウ、ピューマ、ジャガーの7種の動物について、こちらが爪切りをしてやらねばなりません。メスのヒツジやヤギは飼育担当者に保定してもらい蹄を削ります。(削蹄「さくてい」といいます。)りっぱな角を持ったオスのヤギはロープを角にかけて柵に動かないように保定して削蹄します。オスのバーバリシープなどの大型草食獣になりますと素手で捕まえることは危険であるため、麻酔銃を使用して眠らせてから削蹄をします。もちろんヒョウやアムールトラなどの肉食獣は麻酔は必須で、その後に爪を切ります。彼らは捕まえられて押さえ込まれたり、銃で撃たれて痛い思いをしているので、順次、自身で爪研ぎをするだろうと思われがちですが、それは私たちの思いこみで終わってしまいます。
また、削蹄をしてもすでに足の関節が曲がってもとに戻らなくなってしまったり、高齢になり麻酔に耐えることができないなどの問題もでてきますが、爪や蹄を伸ばしたままにしておくことは、より大きな苦痛を与えることになるので、少しでも苦痛を軽くするために、肉食動物は年に1回、草食動物は年に3〜6回、爪切りや削蹄をすることにしています。
飼育課 市川 久雄
|