家畜は本当におとなしいか?

飼育課:油家 謙二

 動物園の北西の角の辺りにヤギ・ヒツジ・トカラヤギの3種類の家畜が並んで展示されています。
 これらはいずれも家畜ということで性質がおとなしく、体もそれほど大きくないので、お客さん側の柵は、あまり高いものを設置せず、その柵の上からお客さんは、動物に餌を与えることができます(この餌は動物園で販売されているものです。持ち込んだものを与えないでくださいね)。
園内では、こうして動物とふれあえるエリアが限られているためか、この家畜を展示している一角はわりと人気があります。
 また、春頃に子供が生まれたりすると、とてもかわいらしいので、たくさんの人だかりができ、たいへんほのぼのとした雰囲気になります。
 こう書くと、ヒツジやヤギは本当に穏やかな生き物に見えるのではないでしょうか?でも、実際にはそうではない一面も持ち合わせているのです。
 最近動物園に来られて、実際にこのエリアをご覧になられた方の中には気づいた方もおられるかもしれませんが、ヒツジとトカラヤギの間の柵が、新しくなっています。これはただ単に古いから改修したのではなく、実は、それぞれのオスがお互いに柵を挟んで、頭突きをしたため、柵が壊れてしまったのです。
 さらに、ヒツジとヤギの間の柵も同様で、最近ぐにゃぐにゃに曲がって、手で押すと、ぐらぐら動く所もでてきました。こちらの柵もいつまでもつものやら心配です。
 ヒツジやヤギの仲間は、鋭い爪や牙を持たない代わりに、とても硬い頭蓋骨を持っており、敵と闘う時はそれを武器にします。また彼らは一頭のオスと複数のメスで一つの群れをつくっており、その中でオスは、自分の群れを守るために他のオスが近付くと猛然と闘争を仕掛けます。この時、いかに群れと群れの間に柵があっても、彼等の闘争を止めることはできないようです。
 一般に、ヒツジなどは家畜になると野生種よりおとなしくなるといわれていますが、こういったオス本来の本能はなかなか消えないようです。皆さん、くれぐれも石頭比べなどしようと思わないでくださいね。