2004年は12年に1度の猿年です。天王寺動植物公園では小型のショウガラコから大型のチンパンジー・オランウータンまで様々なサルの仲間を飼育・展示しています。今回は、サル・ヒヒ舎で飼育・展示しているサルの仲間の特徴を書きたいと思います。

 サル・ヒヒ舎にはオナガザル科の仲間8種、テナガザル科の仲間1種、オマキザルの仲間1種、キツネザルの仲間1種の合計11種39頭(2004年1月1日現在)を飼育しています。
 オマキザルは、南アメリカに住むサルで、新世界ザルとか広鼻猿などと呼ばれています。“新世界"というのはアメリカ大陸を指す言葉です。つまりコロンブスによって新たに発見された大陸なので新世界と呼ばれています。くれぐれも大阪の新世界という意味ではありませんので間違わないようにしてください。広鼻猿というのは、よく観察していただければ解りますが、左右の鼻の穴の間隔がオナガザルの仲間などより広いためです。よくオマキザルの仲間はしっぽを上手に使って木の枝などにぶら下がることができると考えられていますが、当園で飼育しているフサオマキザルをはじめ、多くのオマキザルの仲間はそのようなことは出来ません。
 キツネザルの仲間はマダガスカル島(アフリカ大陸の隣の島)にだけ生息しており、口から鼻先にかけてとがっていて、毛が無く鼻先が湿っているのが特徴です。また原猿類とも呼ばれています。当園で飼育している種はエリマキキツネザルで、体は黒と白の毛に覆われていて、首のあたりが白い襟巻きをしているように見える所から名前が付いています。キツネザルの仲間の中では最大の種です。大きな甲高いなきごえを発し、コミュニケーションを図っています。
 テナガザルは、東南アジアに広く分布し樹上性のサルで、オランウータン・チンパンジー・ゴリラと同じ類人猿の仲間です。類人猿にはしっぽはありません。テナガザルは、よく発達した長い腕を使って木の枝から枝へ、動物園では鉄棒から鉄棒へと腕渡り(ブラキエーション)をします。そのため歩く・走るということは苦手で両手を上げた不格好な形で走っています。当園で飼育している種はフクロテナガザルで、のどに大きな袋を持ち、大きくふくらまし、大きな声でテリトリーソングを歌います。音の大きさは言葉では言い表しにくいので動物園に来られて一度聞いてみて下さい。先ほどキツネザルも大きな声で鳴くと書きましたが、サル・ヒヒ舎では隣りどうしで飼っているのですが、屋内の展示室で“はもる"時があります。コンクリートで出来た部屋ですから、その大きさときたら「かんにんしてや」と叫びたくなるくらいですからかなり大きいですよ。
 次にオナガザルの仲間です。皆さん“サル"といわれてまず思いつくサルといえば?と質問されたら、たぶん多くの方がニホンザルを想像されると思います。(ちがったらごめんなさい)動物園でもニホンザルをはじめ多くのオナガザルの仲間を飼育しています。アジア大陸からアフリカ大陸(旧世界)に分布しその地域地域で人間と密接な関係を持っています。ニホンザルは芸をする芸人として、ブタオザルはヤシの実を取る職人としてよく知られています。
 当園サル・ヒヒ舎ではカニクイザル・ブタオザル・シシオザル・サバンナモンキー・ブラッザグェノン・フランソワルトン・ドリル・マンドリルを飼育しています。ブタオザルのオス(当園名マサアキ)は怒る・威嚇するなどの表情が豊かで人気者です。また、ブラッザグェノンは産まれたときからあごに白いひげを持ち、日本人に昔から親しまれているテレビの人気番組の主人公にたとえて、“黄門ザル"と呼ばれることもあります。フランソワルトンはオナガザルの中では少々変わっていて、他のサルが木の実や果物・昆虫を主食としていますが、主に木の葉(当園ではクロガネモチ・ネズミモチ等)を主食にしています。このような仲間を“リーフイーター"と呼んでいます。
 次にマンドリルとドリルですが、この種の特徴は雄と雌との体の大きさが極端に違うことが上げられます。このようなことはヒヒの仲間に見られることで、ヒヒの仲間に入れられる場合もあります。マンドリルは顔に赤と青色のコントラストがあり、お尻のあたりの毛も鮮やかな色彩を放っています。当園の雄ももう少し年を取れば鮮やかな色になると思います。動物園でマンドリルやドリルの雄があくびをよくしているところを見られたことがあると思いますが、人間でいう“あくび"ではなく大きな犬歯を見せて威嚇をしているのです。
 ここまで天王寺動物園のサル・ヒヒ舎で飼育・展示しているサルの仲間のことを色々書きましたが、このように同じサルの仲間でも種類によって、また住む地域によって様々な進化をし、行動や特徴が変化しています。ですから、動物園に来園された時には、ただかわいいとかだけではなく、少しいつもと違う見方をされれば新たな発見があると思います。また、当園でもペットとして人間に飼われていて保護されたサルが数多くいます。ペットを飼うことは悪いことではないです。しかし、ペットが死ぬまで面倒をみることは飼い主の責任だと思います。皆さんも色々考えていただきたい、動物園に足を運んでみてはいかがですか。

飼育課 岡田 博之

 

ブラッザグエノン親子
フクロテナガザル
ドリル