飼育課:野口 秀高


●はじめに
 当園ではベニイロフラミンゴ10羽、ヨーロッパフラミンゴ15羽、チリーフラミンゴ29羽を混合飼育しています。1991年にベニイロフラミンゴが繁殖して以降、繁殖がみられませんでした。原因はコサギやゴイサギ、カラスなどの野鳥、ネコの侵入ではないかと考えられたので、2002年にこれらの動物が侵入できないように前面にピアノ線を張天井と後面にネットを張る改造工事を行いました。その結果、昨年、営巣・産卵が見られ、ヒナが誕生し、無事成育しましたので、その経過を報告します。

●営巣・産卵
 3年前の4月から5月にかけてペアリングができ、くちばしで小石や小枝を集める行動が見られたので、巣材になる砂や土を入れましたが、産卵には至りませんでした。
 そして、2003年は2月中旬から繁殖に備え、巣材となる土を入れ、繁殖を促すため、バケツをひっくり返したような形の人工の巣をいくつか作ってやりました。何羽が人工巣に興味を示し、巣作りを始め、人工巣以外に巣を作るペアもあり、合わせて9ペアが巣を作りました。5月4日に待望の産卵がありましたが、残念なことに翌日卵がなくなってしまいました。原因はいまだによくわかりません。続いて、5月6日、9日、11日、18日、19日、6月9日にも産卵が見られ、合計9個の卵を確認しました。

●抱卵・ふ化
 産卵後、オスとメスが交代で抱卵し、巣を補修したり、立ち上がって転卵したりします。雨が降ってもじっと巣を離れず、しっかり抱いていました。
 6月29日、親鳥の羽の下に白い産毛が見えました。ヨーロッパフラミンゴがふ化したのです。続いて、7月2日にチリーフラミンゴ、8月6日にチリーフラミンゴとヨーロッパフラミンゴ、8月20日にヨーロッパフラミンゴがふ化しました。ふ化日数は30日と31日でした。

●育雛とヒナの発育
 ふ化したヒナは2〜3日間は親にだかれていますが、その後は巣を離れ、5日目ぐらいになるとヒナは巣の近くを歩き回るようになり、池にも入ったりします。
放飼場のあちこちに赤い液体が落ちているのが多く見られます。これはフラミンゴミルクと呼ばれるもので、親のそのうから分泌されるヒナの餌となる赤い液体です。親鳥はこのフラミンゴミルクをヒナに口移しで与えます。フラミンゴのくちばしは曲がっていますが、ヒナのくちばしはフラミンゴミルクをもらいやすいように真直ぐです。3週間目ぐらいから少しずつ曲がり始めます。4週間目ぐらいから、白い羽毛が褐色に変わり始め、3から4か月ぐらいで親と同じぐらいの大きさに成長し、ピンク色の羽毛が少しずつ出てきます。ふ化後1年近くなった現在も灰褐色の羽毛が少し残っています。

●おわりに
 今回、動物舎の改造が良かったのか、天王寺動物園としては久しぶりに繁殖に成功しました。今回13個産卵し、5羽がふ化しましたが、混合飼育しているため、雑種が2羽できてしまいました。今後の問題点として、雑種を防ぐ方法を考えてみたい思っています。