先日、2頭のフタコブラクダの引越しを行いました。新居はすぐ近くの、旧カモシカ園の一角です。この引越しの様子をお話したいと思います。
一般的にラクダというとおとなしく、人や荷物を乗せて砂漠を歩いたりしているイメージがあると思いますが、天王寺動物園のラクダはそういった訓練をしていないため、担当者には多少慣れていますが、それでも上に乗ったりはできません。ましてや、まったく新しい場所へ自分で歩いて行かすことはできません。またラクダには草食動物には珍しく大変大きな犬歯(牙)があり、無理に引っ張ったりして噛まれたりすると、大ケガをしてしまいます。
人間も動物も安全に引越しするのが大前提ですので、ラクダを箱に入れてトラックに積んで移動することになりました。そのため,何日も前から放飼場に箱を設置し、箱の中で餌を食べるように慣らしました。オスのジャックはもともとおっとりした性格で、割とすぐに箱に入るようになり、引越し当日もすんなり箱に閉じ込めることができましたが、新しい場所について箱の扉を開けても、全然出ようとしません。箱の中でトラックに揺られているうちに、びびってしまったようです。さらに、気がついたらまったく見覚えのない所に来ているので怖くて出られないようです。後ろから棒でお尻を押しても、相手は体重500kg以上もあるので、踏ん張られるとびくともしません。しばらく途方に暮れていましたが、ふとあることに気が付きました。箱を置いた場所はアスファルトで舗装されていました。それが特に怖いのでは、と考えました。彼らは今までずっと砂の上で生活してきたのです。そこで、箱の前にたくさんの砂を撒いて様子を見ると、少ししてから自分から出てくるではありませんか。なるほど、と思いました。
続くメスのコニ―は、箱に入れてクレーンで吊り上げた時に中で暴れたりしましたが、何とか無事引っ越すことができ、今では2頭仲良く新居の生活を楽しんでいます。
皆さん見に来てくださいね。
(飼育課:油家 謙二)