飼育課:鈴木 克治、西岡 真


2004年7月12日にブチハイエナの赤ちゃんが生まれました。

 

生まれた次の日の(2004.7.13)
自分で歩くことができます。色は真っ黒でクマのようです。でも歩く姿はちいさくてもハイエナの歩き方でした。

 みなさん、ブチハイエナという動物をご存知でしょうか?ブチハイエナは南アフリカ南部とコンゴ盆地を除くサハラ砂漠以南のアフリカのサバンナに住んでいます。夜行性で昼間は木の茂みや穴の中に隠れていて、日が暮れたら食べ物を探しに出かけます。平原の掃除屋と呼ばれていて、動物の死体や他の動物の食べ残しなどを食べており、あごや歯がすごく丈夫でライオンなどが食べ残した骨でもバリバリと噛み砕いて食べていると思われていました。しかし、最近の研究では、食べ残しをあさったりするだけでなく、ライオン達から獲物を横取りしたり、自分達で狩りをして獲物を捕るほうが多いことが分かりました。

 父親のと母親のはアフリカにあるタンザニアという国から海を越えてはるばるやってきました。が2003年2月24日、は2003年3月11日に来園しました。メスのの方が強く、オスのは逃げ回り、隅にいることが多く、交尾は観察されませんでした。そんなわけで、妊娠しているとは思われませんでした。
 ハイエナはネコ目(食肉目)ハイエナ科の動物で、イヌともネコとも違う特徴を持っています。生まれたばかりの状態も、かなり違うところがあります。イヌの赤ちゃんは生まれたときは耳が前に折れ曲がっていて、成長するとだんだん立ってきますが、ブチハイエナの耳は生まれたときは後ろ向きに頭に張り付いています。目は生まれた日から開いているし、なんと生まれたときに前歯が生えています。また、肉食獣では珍しく生まれて数時間もすると自分で歩くことができます。生まれてすぐに歩くことができるため大変なことが起こってしまいました。

 出産当日、朝早く出勤するとオオカミ舎で何かイヌかネコの赤ちゃんのような鳴き声がしました。管理通路に入って周囲を観察をすると、ブチハイエナのメスの寝室が血だらけになっていました。出産を疑いましたが、赤ちゃんの姿が寝室内のどこにも見当たりません。しかし、鳴き声は聞こえるので、声のする方へ探しに行きました。すると、排水溝の中で真っ黒な赤ちゃんが2頭鳴いていました。すぐに助け出し、体が少し濡れていたのでタオル2枚で身体を拭きました。それから動物病院にあった保育器をオオカミ舎の管理室へ移し、2頭を収容しました。2頭の体重は1200gと1000gでした。体色は真っ黒で、すでに自分で歩くことができ、前歯と牙が生えていました。目は開いており、見えてはいないようでしたが、明るさは感じているようで、暗くすると落ち着きました。性別は不明でした。ブチハイエナの性別は見た目では分かりにくく、昔の人は雌雄同体だと思っていたそうです。

(2004.7.13)
 耳が後ろ向きに頭にぴたっと張り付いています。
(2005.7.1)
 もうすぐ1歳になるちゃんです。体重も40kgに近づき、丸々と太ってブチ模様も立派になりました。


 動物園で野生動物を飼う場合、赤ちゃんにいったん、人の臭いがつくと、母親が咬み殺してしまう可能性もあるので、2頭の赤ちゃんを母親に戻すか人工哺育で育てるか相談をしました。衰弱していないのを確認して、体重の軽い赤ちゃんを母親に戻し、もう1頭は人工哺乳をすることにしました。母親に戻した子がです。を母親のもとに戻すと、母親のはすぐに授乳を始めたので、とりあえずほっとしました。しかし、母親は初産であり、乳がちゃんと出るか分からなかったので、3日後の体重の変化を見て、増えているようなら人工哺乳の子も母親に戻すことにしました。

 3日後の7月15日に体重測定すると、母親に戻したの体重が増えていたので、人工哺乳をしていた子も母親に戻すことにしました。しかし、残念なことに戻した子は2日後の7月17日に亡くなってしまいました。
 の生まれたときの体重は、ちょうど1kgだったのですが、約100日後には10kg(10倍)に、半年後には20kgになりました。その後も順調に成長し、1歳を前に40kgを超えそうです。毎週月曜日に体重を計りましたが、成長に合わせて測定のための箱を4〜5回作り直しました。体重測定の結果はグラフを参照してください。
 生後50日くらいには、母親の餌を少し食べ始めました。今では母親と同じように骨までバリバリ噛み砕いて食べています。

体重測定コンテナ(2004.12.27)
 体が大きくなってきて、コンテナで量っています。ちなみに体重は17.75kgでした。


 ブチハイエナは名前が示すように体にはブチ模様があります。しかし、生まれたときは真っ黒で、見た感じはブチハイエナというよりも、クマの赤ちゃんという感じでした。生まれて1カ月半頃に耳から順番に頭、首、上半身、お尻とだんだん色と模様が変わってきて、今では体のブチ模様も立派に出てブチハイエナという感じになってきました。

オオカミ舎の一番左の部屋で展示しています。来年の夏か秋にはサバンナ区の肉食動物ゾーンが完成し、引越しをする予定になっています。午前中はお父さんを展示し、午後からはをお母さんといっしょに展示していますので、会いに来てください!