どうする、新聞紙!

 天王寺動物園の敷地の西端には阪神高速道路が通っています。その高架下に私の担当しているキジ舎があります。キジ舎には現在10種のキジ類を展示していますが、その中に日本の国鳥のニホンキジも含まれています。

 キジの仲間はほとんどが地上で生活し、地面に落ちている木の実や果物、小さな虫などを餌にしています。繁殖期になると、オスは美しい羽をメスに見せて求愛行動をし、交尾します。メスは地面に巣をつくり、卵を産んでメスだけで卵を暖めます。ヒナがふ化してからもメスだけで育てます。オスは子育てに全く参加しません。このような生態のキジ類では、オスはきれいで派手なのに対して、メスは地味な茶色の羽をしています。これは抱卵中やヒナを育てる時に、天敵に対して目立たないようにするためです。

 ニホンキジの場合も、オスはたいへん鮮やかで、光沢のある色をしています。さすが国鳥に指定されたり、お札(旧1万円札)のデザインに使われたりするだけのことはあると思わせる美しい姿をしています。しかし、見た目とは裏腹にたいへん怖がりで臆病な鳥なのです。小さなの物音にも反応し、部屋の中をバタバタ飛び回るので、掃除や餌をやる際にいちばん気を使う鳥です。例えばフサホロホロチョウなどは餌を持って部屋に入ると、それを置く前に、手に持っている餌をつついてくるほど人なつこいのですが、ニホンキジの場合は、私が部屋を出て、人の気配がなくなってから、ようやく餌を食べにきます。

 今年の繁殖期に何種類かのキジを人工ふ化させましたが、他のキジ類のヒナはおとなしくしているのに、ニホンキジのヒナだけは育すう箱の中を走り回っていました。ヒナのうちから性格は変わらない、根っからの臆病者のようです。

 昔話の「桃太郎」では、桃太郎といっしょに鬼退治をしたということになっていますが、はたして役に立ったのでしょうか?

(飼育課:油家 謙二)