野生動物にドキドキ

写真家
錦織 秀雄 さん

 フィールドでの活動が多いため、これまで野生動物に出会う機会がしばしばありました。出会ったときには理屈抜きにドキドキします。しかし、野生の動物達にそれほど興味がなかった頃はそれほどの感慨もなく通り過ぎるだけでした。でも、それもいい体験だったと思い返されるのですが、ある冬、知床で飛べなくなったオオワシを見つけ、その原因が鉛中毒だと知ってからは野生動物や環境への興味が強くなってきたように思います。それでも興味の対象は高山や遠く北海道などのスケールの大きな自然の中の生き物でしたが、後に里山の保全活動に関わるようになり身近な里山に棲む野生動物たちの存在にも目が向くようになりました。タヌキ、ネズミ、イノシシ・・・なーんだ珍しくもないと言われそうな彼らですが、案外その姿を直接見る機会は少ないものです。
冬の知床半島では、オオワシ、オジロワシを見るためにわざわざ諸外国から来る人達がいる一方、地元の人達のほとんどは彼らの存在を気にかけることなく生活をしているように見えました。当時は、こんなにすごいところに住んでいる知床の人達はいいなぁと思ったものですが、ここ大阪にも住宅地のすぐ近くの里山に野生の動物達がいたのです。人間の活動で野生動物の棲家を追いやっているという現実を忘れてはいけませんが、野生の動物達の気配は案外身近にあります。
動物観察も自然環境に対する負荷を伴いますが、私にとってはこれらを通して動物、森、環境、私たち人間の在り方・・・などなど考えるきっかけになったのも事実で、負荷にみあうものを還元するには・・・と模索しながらも足跡や糞にワクワクし、気配にドキドキしています。環境負荷とそこから得られるもののバランスをとりながら、身近に野生動物が暮らす環境を次の世代に残したい。そのためにも動物観察などを通じて身近過ぎて気付かないでいるものの大切さを見直して、地域に向けて発信していきたいと思います。

(にしきおり ひでお)