今年も暑い夏がやってきました。我々人は、扇風機やエアコンを使い涼しくすごすことができますが、動物園の動物たちはどうしていると思いますか?
私が担当しているレッサーパンダは暑さが大の苦手。野生でも涼しい高山に住んでいますのでレッサーパンダ舎には冷房機が完備しており、25度を超えないようにしています。
しかし、もう一つの担当動物であるアジアゾウでは冷房機はありません。ゾウは暑いところに住む動物とのイメージが定着していますが、野生のアジアゾウが生息する熱帯雨林では、直接日光が差し込まないので、夜間は気温が下がり、けっこう涼しいのです。そんなゾウ舎で、少しでもゾウが快適に暮らせるように考えた新しい暑さ対策を紹介しましょう。
天王寺動物園では、春子(推定59歳)、ラニー博子(推定38歳)の2頭のアジアゾウの雌を飼育していますが、彼らにとっても大阪の夏は暑すぎるようです。時間を作って2頭のゾウたちホースで水浴びさせています。飼育員がホースで水浴びさせてやる回数も限度があります。若いラニー博子は自分でプールに入って水浴びをしますが、高齢で慎重な春子は、新しいゾウ舎に引っ越してきて4年も経つのにプールに入ろうとしません。その上、放飼場の周りの樹木が、まだ生長しておらず低いため、日中、放飼場にはほとんど日陰がありません。わずかにできる日陰に入ってしまうと、入園者からはお尻しか見えなくなってしまいます。
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わずかにできた影に入るゾウ
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そこで、放飼場の中央に日陰ができるように日除けを設置することにしました。しかし、次のような課題がありました。
・ゾウがいたずらをしないように鼻先が届かない高さにすること。
・常設ではなく夏期のみに設置するので取り外しが簡単であること。
・生態的展示を行っているので日除けが景観に違和感を与えないこと。
以上の課題を検討して、昨年の8月28日の休園日を利用してゾウ舎中央、ビューイング・シェルターの屋根の上に日除けを設置しました。日除けは竹ざおと寒冷紗(遮光、防風、防虫、防霜の目的で使われる農業用の織り目の粗い黒い布)を利用した簡単なもので、竹ざおを差し込むための金具をビューイング・シェルター屋根に取り付けました。でき上がった日除けは風を受けてはためいていました。
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金具の取り付け作業
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取り付けられた日除け
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翌日、放飼場に出てきたゾウたち、春子は「変なものがある」といった感じでじっと見ていました。ラニー博子は日除けに気付くと鼻を高く上げ、匂いを嗅いで様子を見ていましたが、風ではためくと「なんじゃ。こりゃー」と言わんばかりに、鼻で砂を投げるたり大変なさわぎでした。しかし、翌週には台風が接近してきたため慣れるまもなく、取り外さなければなりませんでした。
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匂いを嗅ぐラニー博子
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今年も梅雨明けから設置する予定ですが、風で寒冷紗がずれないように改良しました。ゾウたちが少しでも快適に日陰を利用できるように願っています。
(尾曽 芳之)
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