きれいなオシドリはどこへ行ったの?


  夏の“鳥の楽園”には豊かな色彩のオシドリが見当たりません。オシドリだけでなく他のカモたちも地味な羽色をしています。多くのカモの雄は繁殖期には雌の気を引くため、きれいに身を飾りますが、そのままだと目立ちすぎるので繁殖期が終わると雌と同じような地味な色になります。鳥たちはこの時期に次の繁殖期によい卵を産むために栄養を蓄えています。
 さて、“鳥の楽園”の離れにはヒナを育てるための育すう舎があります。残念ながら公開していないのでご覧いただけないのですが、そこでふ卵機で人工的にふ化させたオシドリを育てています。オシドリは木の樹洞などに巣を作るので、木箱で作った巣もよく利用します。しかし、“鳥の楽園”では多くの種類の水鳥を混合飼育しているので、木箱の中で卵を抱かせても、他の鳥に邪魔されて卵を割られたりするので、自然に任せておいてもふ化する可能性はほとんどありません。オシドリのヒナはふ化後すぐに走ったり自力で餌を食べることができるので、人の手でも育てやすい鳥です。そこで、ふ卵機で卵を温めふ化させ、飼育係が「育ての親」になります。
 6月のある日、オシドリの卵がひとつ落ちていました。母鳥が巣箱を追い出され、たまらず産み落としたのでしょうか。ふ卵機に入れて30日、無事にふ化しました。他のカモは人工で育てると、ある程度人に慣れるのですが、オシドリは不思議と慣れません。親に促されて木の高いところにある樹洞から飛び降りる習性と関係あるのでしょうか?1羽で育てれば、人に慣れるのではないかと思いましたが、これも全然慣れてはくれず、あげくはヒナは「育ての親」である私に対して立派に威嚇します。誰に教わったわけではないのですが、生きていくために自分が何をすべきかを理解しているように思えます。

オシドリのヒナ
雌と同じ羽色になりつつある雄のオシドリ

(上野 将志)