動物の繁殖計画―カバ―

ティーナテツオ側プールに
初めて放飼した時の写真です。
案外落ち着いていました

 天王寺動物園ではたくさんの動物達を飼育していて、毎年いろいろな動物が生まれています。2007年には哺乳類では3月4日にフタコブラクダのトニーが、6月、7月にはカリフォルニアアシカが雄2頭、雌2頭、8月14日にブチハイエナのちゃんが生まれています。アフリカサバンナゾーンで、今、繁殖に取り組んでいる動物に、カバ、クロサイ、アミメキリンなどがいます。その中で、特に苦労しながら取り組んでいるのが「カバ」です。カバの担当飼育係と獣医師が何回もミーティングを行い、それぞれの意見を交換し、繁殖のための計画を進めています。
 天王寺動物園では、これまでに12頭のカバが生まれ、その内8頭が成育しています。最後に生まれたのが、現在も天王寺動物園で飼育しているテツオ君で、1983年10月10日生まれの24歳、最後の繁殖からすでに24年も経っています。テツオ君のお母さんのナツコも天王寺動物園生まれで、1972年8月24日生まれの35歳、これまでに4頭の赤ちゃんを産んでいるおかあさんカバです。現在、天王寺動物園のカバは、ナツコテツオの親子とティーナちゃんの3頭です。ティーナちゃんは1998年10月2日メキシコの動物園生まれの9歳で、天王寺動物園には1999年12月27日にテツオ君の将来のお嫁さんとして入園しました。もう9歳になるので、そろそろお嫁さん候補から本当のお嫁さんになって、天王寺動物園では久しぶりのカバの赤ちゃん誕生を目指すことになりました。
 カバは1年中発情し、約35日の周期で3〜4日の発情を繰り返します。カバの雌が発情している時には「ヴォッ、ヴォッ、ヴォッ、ヴォッ、ヴォッ、ヴォッ」という鳴き方をします。妊娠期間は約240日で、出産と育児は通常水中で行います。カバの交尾はたいへん激しく、雄が激しく雌を追いかけます。そのため雌が怪我をすることがあり、以前ナツコも交尾時の雄の牙によって皮がベロンとめくれたことがありました。
 天王寺動物園では1997年にカバ舎を建て替えました。新しいカバ舎はアフリカのマサイマラ動物保護区の生息地を再現するとともに、水中のカバの様子を見ることができるようになっています。以前のカバ舎のプールには両側にスロープがあったので、グルグル回って雌が逃げることができました。しかし、今のカバ舎は追いかけられた雌に逃げ場がなく、また2つのプールにはスロープがそれぞれ1つしかないうえに、陸上も狭く2頭が追いかけっこをするスペースが十分ありません。水中で逃げるためには2頭で回れるスペースが必要です。そのため水中が少しでも広いテツオ側のプールで同居する方針に決めました。しかし、ティーナはそれまで水中透視プール側にしか出たことがありません。そこでまず、ティーナテツオ側のプールへ出すトレーニングを9月中旬から始めました。テツオの寝室の前を通って出るので、ティーナが発情していると、お互いに行動の変化があり見極めができることも考えました。
 現在はティーナがテツオの前を通りスムーズに出て行くようになりました。そしてテツオティーナの初同居のタイミングを計っているところです。
 水中での出産シーンや育児の様子を記録に残すことやお客さんに見てもらうことは、水中のカバを見ることができる天王寺動物園の使命だと考えていますので、飼育係と獣医師が協力し頑張って繁殖に取り組みたいと考えています。そして、皆さまに水中のカバの親子を見ていただけるように頑張りますので、応援してください。

(西岡 真)