カヤネズミとは、カヤ原(ススキやオギなどのイネ科の草むら)に生息している日本最小のネズミです。カヤとは昔の住宅に使われていた『かやぶき屋根』のカヤ、といったらわかりやすいでしょうか?日本では土手や河川敷、使っていない田んぼなどの背丈の高い草原に暮らしています。体重は7〜14グラム、背中はオレンジがかった茶色でおなかは真っ白のとても愛らしいちいさなネズミです。
さて、そのカヤネズミですが、日本最小の他に巣に特徴があることで知られています。イネ科の植物にするすると登り、自分の体重でしなった葉を利用して、草の上に直接ボールのような巣を編み込んで作ります。草むらの中で、葉を利用して巣を作ることによって周りの植物と同化し、巣を目立たなくさせているのです。この巣で出産したり、子供を育てたりします。
今年の夏から天王寺の夜行性動物舎でもカヤネズミの展示を再開しました。丸見えでストレスを与えないよう、巣作りもできるようにイネ科の植物もたくさん入れた状態で展示してみたのですが、なかなかうまく巣を作ってくれません。作ったとしてもきれいな丸いボール状の巣ではなく、ちょっと休憩できる足場程度のものくらい。入れている草が悪いの
か、展示の条件が悪いのか…巣を作らない状態でストレスにはなっていないのか?いろいろ悩んで試行錯誤の日々でした。しかししばらく経ったある日の朝、夜行性動物舎にいくとボールのような丸い巣が!その後そこで子供を出産したようで、少しだけほっとしたのでした。今もその巣は使っています。小さくて探しにくいですが、夜行性動物舎にきたとき
は、少しだけゆっくり観察してみてください。
そんなカヤネズミも、自然下では河川敷の開発など、生息できる環境が少なくなり地域によっては準絶滅危惧種(きぐしゅ)になっている場合もあります。野外でカヤネズミを見つけても、つかまえて持って帰ったりせず観察するだけにしておいてくださいね。
(仁木 美智子)
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