つぶらな瞳(ひとみ)で、とても優しいお友達・・ゾウにそんなイメージを抱いていませんか? 動物園でゾウを飼育する場合、ライオンやトラと違って人間が直接ゾウに触れることがあります。日頃から慣らしておくことで
、健康診断や治療がやりやすくなりますし、出産や育児の手伝いも可能になるからです。ゾウはとても知能が高い動物です。人間と同じようにいろいろなことを考えていますが、ゾウにはゾウの考え方があり、ルールがあります。動物園で暮らしているゾウにも、おそらく彼らなりの考えがあることでしょう。飼育している人間が、そんなゾウたちの考えやルールに全く気づかなければ、あるいは無視してしまえば、大きな事故につながることがあります。力比べでは人間は絶対ゾウにはかないません。毎年のように、世界のどこかの動物園で飼育担当者がゾウに力比べを挑まれて、命を落としています。そんな事故を無くすために、毎年1回「ゾウ会議」が開催されるようになりました。(社)日本動物園水族館協会の主催で開かれるこの会議は、今年で18回目になります。
ゾウ会議は、ゾウと人間の安全を守るということが大きな目的の一つですから、飼育担当者だけではなく、園長など動物園を管理する立場の人も参加することになっています。今年のゾウ会議は、10月中旬に秋田市で開かれました。会議では、安全管理についてはもちろんのこと、幅広い話題が話し合われます。今年の会議のテーマは「教育普及」でした。当園からは、5年前にアジアゾウが新しい施設に引っ越したことで教育普及プログラムが充実したことの紹介と、動物園で教育普及プログラムを組み立てる際のヒントについての提案という内容で、2題の発表を行いました。今年特に関心が高かった話題はゾウの足の手入れについてで、いくつかの動物園から発表がありました。小さなゾウでも体重は3トンを越しますから、足にかかる負担は相当なものです。ちょっとした足の病気やけがでも致命傷となりかねません。ですから、どこの動物園もゾウの足の手入れには、とても気を使っています。
このように、ゾウの飼育で
悩まないように、事故が起きないように、みんなで話し合いましょうというのがゾウ会議です。少し前に、玩具メーカーから犬の言葉を翻訳する機会が発売されました。周りにそれほど持っている人がいないところを見ると、まだまだ誤訳が多いのでしょうか。ゾウに対しても翻訳装置ができれば、動物園関係者の悩みはもっと少なくなるかもしれません。逆に、ゾウに相談を持ちかけられて、余計に悩んでしまうかもしれませんが・・・。
(高見一利)
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アフリカゾウ
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秋田市大森山動物園も視察しました。
そこで飼育されているアフリカゾウです。
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アフリカゾウの運動場
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運動場の真ん中に大きな穴が開いています。
人間でもすっぽりとはまってしまうほどのこの穴は、ゾウによって掘られたものです。ゾウは穴掘りが大好き。土からミネラルを補給したりします。天王寺動物園の運動場にも穴掘りの跡が・・
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新しい動物病院
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完成してまだ半年しかたっていない、新しい動物病院です。
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ガラス張りの治療室
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この動物病院は公開されています。ガラス越しに治療の様子などを見ることができます。米国では10年ほど前から広まっている「展示」です。動物園のすべての活動を見ていただくという考えが根底にあります。獣医は手術中も緊張してしまうかもしれませんが・・
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