アフリカサバンナゾーンの大放飼場ではキリン、シマウマ、エランド、ダチョウなどを一緒に展示しています。こういう展示のしかたをしていると、それぞれの動物同士でいろいろな力関係が出てきます。一番体の大きいキリンが当然一番強いのですが、キリンは比較的のんびりした性格で、雌のハルミはもちろんのこと、雄のケニヤも他の動物をあまり意識していないようで、「我関せず」といった感じです。その次に体が大きいのはエランドのナナなのですが、ナナは雌でしかもエランドは一頭しかいないということで、あまり立場は強くありません。この大放飼場の中で一番偉そうにしているのはなんといってもシマウマでしょう。かれらは数にものを言わせて(もともと3頭でしたが昨年8月に雌のベルが誕生し、また、このベルがかなりおてんばなのです。)エランドやダチョウ、時には片隅でそっと暮らしているハゲコウまでも、追いかけて、いじめたりする無法者です。
そんな好き放題やっているシマウマが、ごくたまに悔しい思いをする時があります。それは「おやつタイム」の時です。これはお客さんに動物達の食事の様子を見てもらうために行っているガイドなのですが、キリンには高い位置で木の葉を与え、シマウマやエランドには青草を地面にまいて食べさせ、「キリンとシマウマはどちらも草食動物ですが、違う高さのものを食べることでエサの取り合いをせずに暮らしています」というような説明をします。ところがたまにキリンのケニヤが、葉を少し食べただけで、すぐに地面の青草を食べだす時があるのです。こうなるとさすがのシマウマも場所を譲らなければなりません。不服そうな顔でケニヤを見ていますが、当のケニヤは相変わらず「我関せず」で食べ続け、気が済むと、また戻って葉を食べます。どうやら彼は木の葉はキープしておいて、先にライバルの多い青草を食べた方が、よりたくさん食べられることを知っているようです。
この光景を見たお客さんには「エサの取り合いはしない」という私のガイドは説得力がないことでしょう。

(油家 謙二)
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