野間馬ハイランドから待望の野間馬がやってきました

のまうまハイランドから待望の野間馬がやってきました


 みなさま野間馬って知っていますか?

 馬といえばどんな馬を思い浮かべますでしょうか?競馬好きの方はサラブレッド? アングロアラブ?子どもたちならポニー?でしょうか。
 動物園にいる馬の仲間といえば、一番に思い浮かぶのがシマウマでしょうか?
 日本人と馬との付き合いの歴史は古く4世紀頃に日本に馬が入ってきて、5世紀中頃には馬事文化が定着したと考えられています。日本在来馬はモンゴルから朝鮮半島を経て九州に導入された体高130pくらいの蒙古系の馬が起源であるといわれていて、サラブレッドよりかなり小型の馬です。
 馬と日本人のかかわりは、時代時代の政治により様々な変遷を遂げます。武士の時代には軍馬として使用されることが多く、近代日本でも軍馬としての改良がすすめられて馬格の大きいヨーロッパなどの馬との交配により大型化が行われ、その結果純粋な在来馬が減少していきました。
 しかし、離島や岬の先端など、主として交通が不便な一部の地域にはかつての姿を残している馬がおり、現在は8種類の日本在来馬が保護されています。野間馬はその中で愛媛県の今治市で保護されている在来馬で、とてもおとなしい性格でそまつな食べ物でもよく働き、体も丈夫で力持ちだったので、江戸時代には田や畑を耕したりの荷物を運んだりするのにとても役立っていました。
 しかし、他の在来馬たちと同様に明治時代になると、小さい馬を育てることを禁止されたり、昭和になると農業の機械化や自動車など交通機関の発達によってどんどんと数が減ってしまい、今治市では昭和30年代には1頭もいなくなってしまいました。
 現在の野間馬は松山市の長岡悟さんが守り育てていた4頭の野間馬を昭和53(1988)年に今治市が寄贈を受け、野間馬保存会を作り地域のみんなで力を合わせて保存育成に取り組んで、野間馬の数を増やしてこられました。そして、野間馬は昭和60年に8番目の日本在来馬に認定され、昭和63年には今治市天然記念物として文化財に指定されました。平成元年には『のまうまハイランド』がオープンし、飼育環境を整備することで、平成8年には飼育頭数が50頭にまで回復し、平成9年には同園をリニューアルし、さらに充実した飼育環境になり現在は80頭を越えるまでになっています。私も家族と2度ほど訪ねましたが、間近に接することができ、馬好きの私には嬉しい限りでした。子供たちもとても喜んで遊んでいました。のまうまハイランドでは、小さくてかわいい野間馬に乗ることも出来ますので、家族連れで遊びに行ってみてはどうでしょうか?きっとみなさんも野間馬が大好きになると思いますよ。
 野間馬以外に在来馬として認定されているのは、北海道の北海道和種(道産子)が約1,500頭、長野県木曽地域岐阜県飛騨地方の木曽馬が約150頭、宮崎県都井岬の御崎馬が約120頭、長崎県対馬の対州馬が約25頭、鹿児島県トカラ列島のトカラ馬が約100頭、沖縄県宮古島の宮古馬が約30頭、沖縄県与那国島の与那国馬が約100頭です。その中で、御崎馬が国の天然記念物に指定されているほか、木曽馬が長野県の天然記念物、トカラ馬が鹿児島県の天然記念物、宮古馬が沖縄県の天然記念物、与那国馬が与那国町の天然記念物にそれぞれ指定され大切に保護されています。
 さて、今治市で大事に大事に保護されてきた野間馬を今年の春に天王寺動物園に2頭も寄贈していただくことが出来ました。その受け入れから飼育の経過や状況、今後の展望などについて、飼育担当のお兄さんに話を聞いてみましょう!

(西岡 真)

飼育現場から

 今年の4月23日に、愛媛県今治市にあるのまうまハイランドより、野間馬のオスの(11歳)とメスのあんり(15歳)をもらい受けました。

のまうまハイランドで餌を食べる福とあんり

のまうまハイランドで餌を食べるあんり

 入園してくる前は、どんな馬がくるのか、性格はきつくないか、環境が変わっても餌を食べてくれるだろうかなどといろいろ考えていました。ところが、いざ飼育を始めてみると、最初から餌をよく食べ、イライラしている時でも決して人を蹴ったりせず、非常に人に慣れていました。私は過去にシマウマを担当していた事がありますが、同じ馬でもシマウマは完全に野生動物で人を寄せつけず、近付くだけでかなり警戒されました。一方、野間馬は家畜なので、人に慣れやすく、近付くと寄ってきたり、なでてやると喜んだりするところがシマウマとの大きな違いです。家畜といっても、馬はもともと群れで暮らす動物なので、あんりも相性が良く仲良しで、どちらか1頭の姿が見えなくなると急に不安がっていました。

入園当初の福とあんり。すぐに慣れて担当者から手渡しで餌をもらっています

入園当初のあんり。すぐに慣れて担当者から手渡しで
餌をもらっています

 さて、検疫も終わり、7月2日に一般公開し、プレス発表の効果もあり人気が出始めた矢先の7月4日に、あんりが死亡するという悲しい出来事が起きてしまいました。担当動物が亡くなってしまうと、飼育係はとても落ち込んでしまうものですが、も例外ではなく、私が手渡しで餌をあげたりブラッシングをしてあげていても、そわそわして落ち着きがなく、見ていてとても可哀想でした。が寂しがらないようにできるだけ相手をし続けていると、徐々に落ち着きを取り戻しました。2頭でいた時よりも寂しいのか、今までよりも私たちに甘えるようになり、展示場でも伸び伸びとすごせるようになりました。

展示場の福。皆さん会いに来てね

展示場の。皆さん会いに来てね

 7月末に、小学校の高学年の児童を対象におこなったサマースクールでは、子どもたちにブラッシングをしてもらったり、ニンジンやリンゴを手渡しであげてもらったりしました。直接動物と触れ合える事は、子どもたちにとって非常に良い経験だったのではないかと思います。

展示時間がすんで寝室に戻る福。安心して手綱を引かれています

展示時間がすんで寝室に戻る。安心して手綱を引かれています

 野間馬は、もともと愛媛県でミカンの収穫に使われていた馬で、のまうまハイランドではその様子を再現して背中にミカンの入った箱を積んで歩く姿を見せているそうです。天王寺動物園でも、今後、まずは休園日に、引き綱を持って園内を散歩できるように慣らしていき、入園客のアイドルに、また将来はかつての農耕馬であったように背中にミカン箱を積んで園内を歩かせ、お客さんにミカンを配ってまわることができれば良いなと思っています。
 最後に、あんりの冥福を祈ります。

(西田 雄之)