現在天王寺動物園では、クミ、ミク、アルン、アーク、スピカの5頭のコアラを飼育しています。私がコアラ担当となり2年が経過し、この間に新しい個体(アーク、スピカ)の来園などいろいろな経験をすることができましたが、まだまだ毎日の餌作りには悩んでしまいます。
コアラは野生ではユーカリの森に住んでいて、新鮮でたくさんの種類の中から好きなものを選んで食べることができるのですが、しかし動物園で飼育しようとすると餌の確保について、とても苦労します。毎日同じ種類のユーカリを与えても必ず食べてくれるという分けでもなく、そうしたことから葉の分厚さや、枝の形状などから、好きそうな枝を選び個体ごとに振り分けては餌を作っていきます。
この個体はこの種類のこんな感じのユーカリが好きだと覚えていても、好みもころころ変わっていきます。「あれっ?この前こんな感じの枝が大好きだったのに今日は食べない」なんてことはよくありますし、見た目だけで判断できないこともあります。特にスピカ、アークは他の個体に比べるとはるかに好みがうるさく、まずはこの2頭の餌を優先して作ったあと、残りを他の個体振り分けているのですが、入荷したユーカリを食べてくれそうもないときなどはほんと困ってしまいます。
朝の出勤後、昨日入れたあのユーカリ食べてるかな?と心配半分、楽しみ半分でコアラ舎に向かいます。コアラの部屋に入りユーカリ全体を見回してそこそこ食べていそうなら一安心。それから一本一本どれを食べたかを見ていきます。当てものみたいで楽しめる部分はあるのですが、自分が入れたユーカリにあんまり自信がない時なんかは今日の夜食べてくれるかなぁと心配になってしまいます。アークとスピカは食べたいものがないと絶対食べないので、次の日の朝見てみて、夜の間に食べてなさそうなら、ハンドフィーディングといって私たちがユーカリを口元に持っていって食べさせます。自分では食べないのにハンドフィーディングでは食べたりするのです。すごく好きなユーカリは自分で食べるけど、そんなに好きではないのはハンドフィーディングでしか食べないといった感じでしょうか。コアラはお腹がすいたら食べるやろうっていうのが通用しないのです。食べる量が少ないままが2、3日続くと、体調が悪くなってしまいもっと食べなくなってしまうといった悪循環に陥るので、だいたい毎日同じ量を食べさせるようにしています。餌を食べてもらうのも一苦労ですが、愛嬌たっぷりのしぐさは見ているだけで癒されます。一度、見に来てあげてください。

(松岡 早苗)
|