1年で完成!盆栽菊

 昨秋も天王寺公園では、様々な種類の菊花が色とりどりに咲き来園者の方々に楽しんでいただきました。現場で作業をしていると菊についての質問も多く受けます。その中でも「この菊は一本の苗で大きな形に作られていますが、何年かかって仕立てられているのですか?」と、大懸崖菊について質問が数多く見受けられました。
 まず菊は宿根草であるため地上部に仕立てた部分は冬には枯れてしまい、根株から新芽が出て冬を越すようになっています。したがって、咲かしたものを続けて翌年も仕立てることはできません。それでは、特別に大きくなる品種があるのか?との考えがありますが、中懸崖(1メートル程の大きさ)と同じ、8月に挿し芽をした苗で冬越しをします。
 答えは、同じ品種の苗でも冬越しの管理方法の違いで春を迎えた時、苗の大きさに差が表れます。菊の性質として新芽は低温時期には伸びず、温度の上昇によって成長し、4月の仕立て始めの時には15センチメート程です。そこで、大懸崖の苗はこの低温時期にも伸ばします。簡単に説明すると春の条件で管理するのです。その方法として苗に日没後タイマーで電照をあて、苗床は電熱線で地温を上げ、また、夜間の温度低下を防ぐためビニールシートを被せます。そうして、成長を促して摘心をして枝を多く出させて、4月の仕立て始めの時には60センチメートル程になります。
 このように、枝が多くある大きな苗で春からの仕立てをスタートできて、大懸崖が作られるのです。そして、この苗の特徴を利用して大懸崖の他にも色々と仕立てられています。

様々な種類の菊花

(伊勢 貴宏)