野間馬ハイランドから待望の野間馬がやってきました

雌のキーウィの療養日記


 天王寺動物園では現在2頭のキーウィを飼育しています。表紙でも解説しましたが、キーウィはニュージーランドの国鳥である、日本では当園だけが飼育展示している希少な鳥です。ところで、皆さんキーウィの展示室をご覧になったことはありますか?中には、ここのところなんぼ探しても展示室には1頭しか見あたらへんやん?と思っている方はいらっしゃいませんか?そうなんです、実は展示室で展示しているのはオスのジュン1頭だけで、雌のプクヌイは高齢で昨年の秋以降体調を崩し、なかなかベストコンディションにならず、展示室ではなく、バックヤードにある予備室で療養生活を余儀なくされています。

予備室

予備室

この部屋でお客さんに見られるストレスも無く落ち着いて餌を食べたり水を飲んだりして過ごす部屋です。

 

 キーウィの鼻の穴は嘴の先端にあり、とても敏感で繊細な嗅覚を持っていて、土の中に嘴を突っ込んで臭いで好物のミミズを探しあてて食べます。当園では10日に1度6kgの活きた養殖のシマミミズを与えています。展示室の中は腐葉土を入れて、ミミズが10日間以上生きた状態でいれるようにしています。ミミズだけではコストも高くつきますし、キーウィに必要な様々なビタミン、ミネラルを補給するため、他にも牛の心臓(ココロ)をミミズに似せて細切りにしたものにオートミールとビタミン、ミネラルなどのサプリメントを混ぜたものを与えています。
さて、雌のプクヌイの療養生活についての話に戻ります。まずは朝一番に、前日の夕方に与えたココロをしっかり食べているか残餌を見て判断し、体重測定を行います。そして、土の中の死んだミミズの掃除やフンの掃除をして清潔にしてあげます。その後、部屋に設置してあるカメラで撮影し録画した映像を見て、1日の採餌状況などの行動をチェックします。

ビデオ解析

ビデオ解析

1日の採餌状況や行動に何か異常はないかをチェックしています。

 

 4月の1ヶ月間の体重変化や状態を見てみると、4月前半は体重も平均1800gあり落ち着いてはいましたが、4月後半から1800gを切ったため、強制給餌を実施しました。強制給餌とは、キャットフードと水にビタミンを混ぜてどろどろのミンチにした餌をカテーテルで胃の中に直接入れることで、採餌状況や体重変化などを確認しながら与える量や回数を決めて実施しています。少々手荒い感じはしますが、キーウィの体重を維持するにはこの方法が今のところベストです。

強制給餌

強制給餌

飼育員がキーウィを保定し、獣医師が嘴からカテーテルを突っ込んで、餌を直接胃に入れます。

 

 それでも体重が落ちてしまったりすると、皮下補液という、人間でいうと点滴のような治療を実施したり、人間でいう酸素カプセルのように、キーウィを箱に入れて酸素吸入をする治療も実施します。

体重測定と酸素吸入

体重測定と酸素吸入

箱に入れて体重を測定しています。体重が減って調子が良くないと隣のボンベで酸素を吹き込みます。

 

 体重が減るなどの体調は当然採餌状況で変化するのですが、その前に部屋の温度変化やミミズの状態など飼育環境にも様々な要素があると思うので、これからも、観察をしながらどうすればベストコンディションになるのかを日々勉強し、1日でも長く生きてもらいたいと思っています。キーウィは、ニュージーランドでも野生の生息数が減り、飼育下でも繁殖が思わしくありません。日本に当園しかいない希少なキーウィを見に来てください。