今年も暑い夏のピークが過ぎて、残暑の季節がやって来ようとしています。
夏は動物園で働く飼育係にとってつらい季節ですが、動物園で暮らす動物たちにとっても非常ににつらい季節です。もともと暑い地域に暮らす動物もいるのですが、大阪のじめっとした暑さはこたえるようです。そういうわけで今回は当園のアフリカサバンナゾーンでの暑さ対策についてお話します。
アフリカサバンナゾーンの入口にはカバがいます。カバはずっと水の中にいて涼しそうに見えるかもしれませんが、真夏の日差しにさらされた展示プールの水は30度以上の水温になってしまいます。この夏、雌のティーナの発情周期が止まり、ひょっとして妊娠したか!?と期待しましたが、実際は水温が高過ぎて繁殖行動もする気にならなかったというのが真相なんじゃないかと推測しています。これではかわいそうだということで、カバがいない間ホースで地下水を注入することにしました。地下水は水道代もかからないし、上水より冷たくて一石二鳥です。このおかげで水温は28度ほどになり、ティーナも発情がちゃんと来るようになりました。
つぎにクロサイですが、かれらはドロドロのぬた場で泥浴び雄るのが好きです。なので、展示場にスプリンクラーで水を撒き、水たまりを作っています。気が向くとそこに入り、体中泥だらけになって満足しています。
この近くのほんの一角にコビトマングースという小さな動物がいます。コビトマングースは寒さにも弱いですが、暑さも苦手です。ここでの暑さ対策はズバリ氷です。水の入ったペットボトルをカチンカチンに凍らせて、それをかれらの寝床のアリ塚(レプリカ)の穴に入れます。これでアリ塚の中に冷気が流れて快適に過ごせるわけです。あまりに暑い日はペットボトルの上に乗っかってだらけている姿も見ることができるかも?
その先には大放飼場がありグラントシマウマやエランド、アミメキリン、ダチョウ、ホロホロチョウなどがいます。ホロホロチョウは、昼間は放し飼いなので、暑ければ木陰や水辺で過ごしているようです。シマウマ、エランドは暑さに強いのか、夏バテしているようなところはあまり見かけません。特にエランドは炎天下でもおかまいなしにそこら辺の雑草をかじっています。こういうのを見ると安心します。
そのまま進んで行くとブチハイエナやライオンがいます。じつはこの二か所は展示場の中に秘密がありまして、岩のように見えるものは本物の岩ではなく、作り物です。この偽物の岩には中に送風装置が隠されていて、涼しい風が出ているのです。しかもこの風がお客さんの近くに出るおかげで、お客さんにも見やすいところに動物も来てくれるわけです。
水浴びが好きなハイエナには、更に、飼育員が不規則に出すシャワー装置もありますので、水をかぶってはしゃいでいる姿なんかも見れるかもしれません。
アフリカサバンナゾーンの最後の方には大池があり、その周辺によくダチョウやキリンがのんびりしています。この辺には背の高い樹が何本かあり、キリンでも入れる木陰があるので、夏場のお気に入りのようです。もともとダチョウは水浴びが好きなので、夏場はよくホースで水をかけてやります。
キリンは本来あまり濡れるのを好まない動物なので、直接体にかけると嫌がって逃げますが、周りの樹にかけておくと、この樹の枝から落ちてくるしずくが体にかかる位置に立ち、気持ち良さそうにしています。そのうちもっと馴れてきたら直接体を洗ってあげられるのになあ、と思っています。
こんな風に夏場なりの動物に対する気配りがあるのですが、みなさんも熱中症などには気をつけてくださいね。
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