キモかわいい!?寄生虫の世界

 みなさんは、寄生虫って聞いたことありますか?おじいちゃん、おばあちゃんの世代には、割となじみがあるかもしれません。学校で蟯虫(ぎょうちゅう)検査とか検便とかをしたことがあるかと思います。ちょっと前には、昔はお腹に寄生虫がいたから花粉症の人が少なかったとか、寄生虫でダイエットできるなんてことが話題になったりしたこともありました。

 では、そもそも寄生虫って何でしょうか。それは人や動物の体の中(腸や血液、血管、臓器など)に棲みついて、こっそり栄養をもらったりして生きている小さな動物です。寄生される方の人や動物を宿主(しゅくしゅ)といいます。寄生虫の場合、宿主に悪さをするので困ります。当然、宿主にとっては寄生虫が棲みついてない方が健康にはいいのです。私たち獣医師にとっても、時に動物の健康を崩したり命を奪ったりする厄介者です。

原虫の一種、アイメリアの仲間
原虫の一種、アイメリアの仲間

 といいつつ、実は私の専門分野がこの寄生虫だったりします。今回はそんな寄生虫のことをちょっと紹介したいと思います。まずひとくくりに寄生虫といっても、非常に様々な種類がいます。まず大きく分けると、原虫と蠕虫(ぜんちゅう)に分けられます。原虫は、顕微鏡でないと見えないくらい小さな虫で、分裂によって増える生物です。こちらは種類も生態も様々で、説明しだすとみなさんが寝てしまいそうなので、サラリと流します。蠕虫には、ミミズのような細長い線虫、ヒルのような吸虫、平たいヒモのような条虫などがいます。

線虫そのもの(幼虫)
線虫そのもの(幼虫)

 線虫でなじみがあると思われるのが、回虫や蟯虫、それに犬を飼っている人ならフィラリアといったところでしょうか。吸虫はなかなかメジャーな種類がいません。もしかすると肝姪(かんてつ)とか肺吸虫なんて言葉を耳にしたことがある人がいるかもしれません。そして条虫は、いわゆるサナダ虫と呼ばれる虫です。犬や猫を飼ったことがある人は、糞の中に白いヒモのようなものを見たことがあるかもしれません。それがこの条虫です。有名なところではエキノコックスがいます。ただ、このエキノコックスは条虫の中でも非常に短い種類で、犬の糞と一緒に出てきても見えません。

 これらの寄生虫の多くは、主に宿主の腸の中にいます。ですので、いるかいないかは糞を検査することでわかります。しかし、糞の中に出てくるのは寄生虫そのものではなく、卵のことが圧倒的に多いのです。つまり私たちは、糞の中に寄生虫の卵があるかどうかを検査しているのです。大人の虫は、姿形を見れば特徴的なヘンテコな構造があったりして見分けることがある程度できるのですが、卵だけで、どの種類の寄生虫かを判断するのは、ちょっとした慣れと知識・経験が必要になってきます。

線虫(鞭虫の仲間)の卵
線虫(鞭虫の仲間)の卵

 もし検査で寄生虫の卵が見つかったら、動物に薬を飲ませて寄生虫を退治します。寄生虫の種類は非常に多いのですが、それを退治する薬はそれほど多くなく、見つかった卵が線虫なのか条虫なのかといった大きな分類さえわかれば、いかに処方すればいいかは簡単に判断できるのです。
なかなかみなさんの目に触れることの少ない寄生虫。姿は少し気持ち悪いかもしれませんが、細かく見ると意外とかわいい構造があったりして、おもしろい生物です。興味のわいた人は、図書館などで調べてみては?

(佐野 祐介)