2月はアフリカサバンナゾーン草食エリアにとって、激動の月でした。
まず14日にはグラントシマウマのノリコが、死んでしまいました。この仔は30歳になる老シマウマで、昨年ぐらいから脚の調子が悪くなり、グランドに出ていても仲良しだったミカとも離れて過ごすことが多くなり、心配していたのですが、年には勝てず、ある朝、寝室で息を引き取っていました。ただ外傷がほとんどなく、苦しんだ様子もなかったので安らかに逝ってくれたのかな、と思っています。
さらにその日の日中には、エランドのルナがオスの仔を出産するという出来事がありました。前から、そろそろ産むかなと思っていたのですが、ノリコがいなくなった直後に新しいメンバーが加入しました。
さらにさらにその2日後にシマウマのナデシコが、メスの仔を産みました。これもある程度予想していたとはいえ、こんなに集中すると不思議なものを感じます。
実は獣舎の寝室の数が決まっているので、ルナとナデシコが出産してそれぞれの仔が大きくなってくると、寝室が足らなくなるなあ・・・とサバンナ草食班内で悩んでいたのです。ノリコはそれをわかってくれていたのかも・・・とふと思いました。
話は変わりますが、同じ時期に生まれたエランドの仔とシマウマの仔ですが、同じ草食動物とはいえ習性や行動パターンはちょっと違います。生まれてしばらくすると立ちあがり、歩けるようになるのはどちらも共通です。というより、弱い立場である草食動物はどんな種でも、天敵から素早く逃れないと、生き延びることができないのです。
シマウマの場合、仔は親の後をついて行き、だいたいいつでも一緒にいます。いわゆるお馬の親子で、しょっちゅうお互いのにおいを嗅いだりとても仲がよさそうです。
エランドはどうかというと、仔は親から離れたところでじーっと座り込んでいることが多く、親のルナも仔に無関心のように見えます。では本当に無関心かというとそんなことはなく、ちゃんとお乳も与えています。これは草食動物の子育て方法の違いで、シマウマは仔が未熟なうちから常に親が仔の近くにいて守るタイプで、エランドは仔がしっかりするまで、仔を安全なところに隠しておき、周りに危険がない時に仔のもとへ行き世話をする、というタイプなのです。
私はシマウマの繁殖は経験がありましたが、エランドは今回が初めてで、この子育てにはちょっと戸惑いました。朝、寝室から親子を出す時も、シマウマの場合は一緒に出て行きますが、エランドの場合はルナだけが出ていき、仔は寝室の隅でうずくまり、見つかっていないつもりでいます。そのままじーっとしていてくれれば、それはそれでもいいのですが、突然、隠れていられる限界がくるらしく、急に飛び起きて柵にぶつかったりします。それなら最初からルナと一緒に行けばいいのに・・・と思うのですが、習性には逆らえないようです。
この2パターン、どちらが正しいとかはありません。厳しい自然界では、最も適応した方法で、子孫を残してきたやり方が受け継がれて残ります。シマウマとエランドでベストな子育て方法が違っていただけなのでしょう。
ナデシコ親子は、そろそろグランドに出る練習を始めようとしています。
ルナ親子の方は、仔がこれからもっと成長して、足腰がしっかりしてきたらルナについて行くようになるのではないかと思います。そのころには皆さんの前に可愛らしいシマウマ、エランドの仔をお見せできるのではないかと思っていますので、もうしばらくお待ちください。
(油家 謙二)
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