「ネルお疲れさん」(ライオン・ネルの思い出)


 7月12日、ライオンファミリーの母ネルが亡くなりました。生後6カ月で熊本市動植物園からやって来たのは1993年7月2日のことでした。

在りし日のネル(2010年7月13日撮影)
在りし日のネル(2010年7月13日撮影)

 

 ネルは雄ライオンのレオと娘のチーとの3頭のライオンファミリーを引っ張ってきました。ボスライオンのレオを支えるしっかりものの妻、娘チーの面倒はよくみてやる優しい母親でした。レオチーが親子げんかを始めると、すぐに間に入ってレオをしかり、チーをなだめてケガをする前にけんかを治めてしまいます。ボスライオンのレオを一応、立ててはいましたが、実質のボスはネルでした。レオも娘のチーネルには逆らうことなく、存在感のあるライオンでした。

左からレオ、ネル、チー(2010年4月28日撮影)
左からレオ、ネル、チー(2010年4月28日撮影)

 

 寝室に収容する時間になっても、レオは時々、寝室に入りたくないのか放飼場でボーッとしていることが時々ありました。そんな時でもレオのおしりをたくような感じで、レオを追い立て、寝室に帰してくれるので、私たち飼育員は大助かりでした。

 寝室では、いつも優しく「ありがとう」という感じで、檻(おり)越しに頭をスリスリさせてくれました。普通、ライオンはネコ科動物の中ではクールな方なのですが、「一緒に檻(おり)に入っても大丈夫かな?」と思うくらいの優しいライオンでした。

 ネルがいなくなって、「レオチーの親子げんかはどうなるか」と心配しましたが、ほとんど親子げんかはしなくなりました。きっとネルが言い聞かせたのだと思います。「仲良く」と。

 19年と6カ月、お疲れ様でした。本当に、存在の大きなライオンでした。ネルありがとう。天国でゆっくりしてください。

 

(町出 猛)