今日は森の巡回調査。たくさんの動物に会いました。コゲラが枯れかけた木を一所懸命つついていて近寄っても気づかなかったり、シジュウカラが木の上のほうでさえずったりしています。羽化したてのチョウがピカピカの羽根で飛び始めました。茂みの向こうから子鹿がのぞいています。この暖かさで粘菌(これは半分動物?)が、落葉の上を這い始めました。
私は小学生のころ、山仕事をしている大叔父の家で育てられました。家には1頭の雌ヤギと2匹のイヌがいて、乳を搾ったり山に連れて行ったりしていました。山で風呂の焚き付けに使う薪拾いをしているとウサギやキジを見ることがありますが、目があうと向こうへ行ってしまいます。隣の家は猟師で、冬にイノシシの足を1本もらいました。貴重な冬の食料で、もちろんその晩のおかずにもなるのです。
ペットとして共に暮らすだけでなく、動物は乳や肉といった食料でもあり、夜に出くわすと怖いものでした。街暮らしの若い人には想像もつかないことでしょう。そんな田舎で暮らすには動物の名前を知っているだけではなく、その背景となる生態や生活環境を理解していなければなりません。あるときは食料にするための知恵として、またあるときは危険回避の手段を考えるために。
動物がそこに棲(す)んでいるその背景が重要なのは、森に棲(す)む動物たちと人とを繋(つな)ぐ環境学習の仕事をしている今も同じです。動物たちを無視して人間が生活をすることはできないと思っています。どこかでバランスを取り合って生きているはずです。同じ日本で、地球で、いっしょに暮らしているのを実感してもらいたいのです。
森には、もともと棲(す)んでいる動物が多いのですが、動物園には世界中から動物がやってきてくれています。日本に来る前、彼らは生まれ育った場所に適応して暮らしていました。「どうんなふうに?」というのも考えてみると、また違った動物園が見えてくるかもしれませんね。