ジャガーの繁殖にむけて


 天王寺動物園には2頭のジャガーがいます。1995年11月生まれで17歳の雄ジャガオと中国の上海動物園から2011年3月24日に来園した2008年9月生まれで4歳の雌ルースです。ジャガオはかなり高齢、ルースはやっと繁殖可能な年齢になったところなので、かなり年の差の夫婦といえます。今回は、ルースジャガオのお嫁さん候補として中国から天王寺動物園に来てから2年余り、2頭が同居できるようになるまでの経過を紹介したいと思います。

雄のジャガオ
雄のジャガオ

 

 どんな動物でも、それまで面識がなかった2頭を一緒にするためには、まず見合いから始めます。最初は前足が入らない程度の細かい目の網越しでお互いのことを認識してもらい、何日か様子を見ます。お互い攻撃しようとしたりせず問題なさそうなら初めて同居してみようということになるのですが、特にネコ科の動物の同居は慎重になります。見合いの時は相性が悪そうではなかったのに同居した途端、一瞬にしてかみ殺してしまうこともありますし、同居してしばらくの期間問題なさそうに過ごしていたのに、なんらかのきっかけで雌が噛み殺されてしまったということも過去にありました。そこで、長期間、十分観察しながら、慎重に進めてきました。

 

雌のルース

雌のルース

 

 また、ジャガーは普段、発情時期以外は単独行動をしているので、発情時期に合わせて同居させると上手くいくことが多いので、雌の発情時期を見極めていくことが大切です。見合いと並行して雌の発情時期を正確に分かるようにルースの朝の我々飼育員に対する行動やジャガオに対する行動の観察を続けました。発情期の雌はローリングといってお腹を上にしてコロコロ転がったり、陰部からの匂いが変化するのでそれに反応して雄の行動も変わり、フレーメンの回数が増えたり、おしっこをあちこちにかけ回るマーキング行動が増えます。観察の結果、ルースの発情は10日間ぐらい続き、終ってから45日ぐらいで次の発情が始まることがわかってきました。

 

ジャガオの前でローリングするルース

ジャガオの前でローリングするルース

 

 同居の際の危険を避けるため慎重になっていたこともあり、かなりの期間がかかりましたが、ルースが天王寺動物園に来てから1年4カ月近くたった2012年11月12日にいよいよ同居してみようということになりました。初めての同居はルースジャガオの寝室を利用して行い、高圧洗浄機械を用意し、万が一2頭が闘争を始めてもすぐ分けることができるように準備していましたが、特にもめることもなく同居させることができました。初めのうちは私たち飼育員が観察できる時間帯だけ2頭を一緒にしていましたが、2頭の相性が良く同居は全く問題なさそうなので、発情期間中は2頭をずっと一緒に展示場に出しています。

 最終目標はルースに元気な赤ちゃんを産んでもらうことなので、まだまだですが、現在、ルースの発情時期にジャガオルースの上に乗りマウントするところまでは至っています。毎回ジャガオがマウントし始めるとルースが動いて中断されてしまい交尾成立までいかないので、もう少しジャガオに頑張ってほしいなぁと思いながら様子を見ているところです。

 

ルースにマウントするジャガオ
ルースにマウントするジャガオ

 

 我々ができることは、発情時期以外を完全に別々に過ごさせて発情のピークに同居させるとか、餌の量を少し減らしみるとかぐらいですが、諦めずできことをいろいろ試していきたいと思っています。

(松岡 早苗)