2010年11月17日に1羽のチョウゲンボウが来園しました。府下で保護されたのですが、どこかで飼育されていたようで、たいへん人によく慣れており、野生復帰が困難と判断され天王寺動物園で飼育することになりました。人によく慣れているので、トレーニングを行って教育普及用に活用することになりました。
チョウゲンボウは漢字で「長元坊」と書きますが、お坊さんの名前なのでしょうか?
分布はユーラシアからアフリカまで広く生息しており、生息地域によって体色もわずかに違いが見られるようです。猛禽類(もうきんるい)の中でも小型な部類に属し、野生下でのエサは小型鳥類やネズミ、トカゲ、トンボなどです。捕食行動は一般に見通しの良い小高い岩場や、都心部では時に高圧線棟・電信柱・ビルなどの場所で獲物を待ち伏せ、急降下して襲ったり、「ホバリング」と言って空中の1カ所で前後左右に動くことなく羽ばたく行動で獲物を探しながら移動し、獲物を見つけるとほぼ真上から急降下して捕えます。狙われた獲物は頭上からの攻撃を受けることになり、非常に危険な状態に追いやられます。また捕えた獲物を貯蔵することでも知られています。ここ天王寺動物園内でも野生個体の観察例が多く(私も観察しています)、冬期には複数の個体を目撃しています。飛来目的はやはり「獲物探し」のようで、ときおり急降下していくのを確認しています。
教育普及用チョウゲンボウは雌で2012年9月から私が飼育担当しています。これまでの飼育経過をみてみますと、2012年9月からトレーニングを開始しましたが、道具類の調達に始まり飼育スペースの問題や飼育技術等の情報収集、飼育目的や健康管理とさまざまな状況をクリアーしなければなりませんでした。
もともと猛禽類(鳥類)には興味を持っていましたし、飼育下にあったと思われえる個体だったこともあって、飼育するにあたっては、開始当初からスムーズな滑り出しをみせています。体重測定はほぼ毎日行い、給餌量は季節・天候、個体の雌雄、採食時の反応でも左右されます。動物園で与えているのは牛肉・マウス・鶏肉がメインです。初めての体重測定では256gでした、「軽いなー」がその時の印象でした。雄ならもっと軽いのか?初めて手に乗せた感触は今後も忘れられません。まだ1年を通して飼育していませんし、始まったばかり・・・今はチョウゲンボウに教えてもらっているのが現状です、お恥ずかしいかぎりです。
まだ時間を決めてはいませんが動物園内でトレーニング・日光浴していますので、ご来園の際にチョウゲンボウを手に止まらせて歩いている私を見かけた時は、注意してみてください。
(西田 俊広)
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