私は今、来春グランドオープン予定の日本一高いビル、「あべのハルカス」に携わる仕事をしていますが、その上階からは天王寺動物園の全景を見渡すことができます。元来動物が大好きな私にとって、最も心躍る景色の一つと言えるかもしれません。今日はそんな私のパートナー、一羽のインコのお話をします。
動物と会話をする―それは、動物好きなら一度は憧れる夢物語でしょう。ところがヨウムという、地味な羽色をした僅か30cm程のインコは、その夢を実現する可能性を持っています。かつてアメリカの大学で研究されていたアレックスという名のヨウムは、単語の組み合わせでおねだりし(ナッツほしい等)、数の概念を理解し、ものの色と形を表現することができました。その結果、Bird Brain(鳥脳:頭が良くない比喩)という言葉を見事に覆すことに成功したのです。
昨年春のこと。私は近所のペットショップでヨウムの雛と運命的に出会い、家族の一員として迎え入れ、ナギという名を付けました。
まだ会話とまではいきませんが、多くの単語を操り、鼻歌を歌い、口笛で老犬を呼びつけて自分のフードを与える姿には高度な知性を感じています。
そしてつい先日。ナギは大好物のバナナチップを口に咥えたまま糞(ふん)をし、「ウンチした」とつぶやきました。口を開けた当然の帰結として、おやつは糞の上に落下してしまいましたが、その瞬間、彼女は「あっ!落ちた!」と悲しそうに叫んだのです。一緒にその様子を見ていた長女と大笑いすると、ナギも一緒になって「うふふ」と笑いました。それは50年以上とも言われているヨウムの寿命を考えれば、きっといつか会話が成立する日が来ると確信するに十分な出来事でした。
動物には人の想像を超えた様々な能力があり、その一端に触れたときの感動は言葉に表せません。そんなことを考えながら、私はこれからも動物園を眺め続けていることでしょう。