キーウィ

 

日本では、ここ天王寺動物園のみで見ることができる動物がいます。それは、皆さんご存知でしょうか?
ゾウでもなく、トラでもなく、ホッキョクグマでもなく、答えは、キーウィです。キーウィといっても知らない人が多いでしょうが、キーウィはニュージーランドの国鳥です。天王寺動物園での飼育は、1970年に大阪で万国博覧会が開催された時に、記念として雄雌各1羽がニュージーランド政府から贈られたのが始まりです。
当園で飼育しているキーウィはキタジマキーウィといい、ニュージーランドの北島の北部の3分の2に分布しており、生息数は約35,000羽で、最も一般的なキーウィです。キーウィは、夜行性で翼は退化して飛べません。餌は、ミミズや昆虫の幼虫、果物等で、長いくちばしの先端に鼻の穴があり土の中にくちばしを突き刺して鋭い嗅覚でミミズや昆虫の幼虫を探し当てることができます。雄が繁殖期に「キーウィ」と口笛のような大きな声で鳴くことが種名の由来です。卵は雌の体重の4分の1程度もある非常に大きな卵を産みます。体重比では最大の卵を産む鳥です。寿命は、野生では20年を超え、飼育下では40年が限度と報告されています。
当園では、1970年の飼育開始から現在に至るまでに合計7羽のキーウィを飼育してきましたが、
現在は2羽飼育しています。写真1が雄のジュンで、1982年にオトロハンガ動物学協会でふ化し、ふ化後約半年で入園しました。飼育期間は32年11カ月で野生下での寿命より12年長生きしています。写真2が雌のプクヌイで、1988年にレインボースプリングズ動物園で孵化し、1991年に2歳8カ月で入園し、飼育期間は26年2カ月になります。
しかし、雌のプクヌイは、2010年10月に削痩、歩様蹌踉(ほようそうろう)を示し、嗜好性(しこうせい)にも変化が生じたので、治療のため為、バックヤードに移し、治療を続け回復の兆しが見えましたが、しかし、冬ごろからまた自力採食を行わなくなり、獣医師がくちばしから、カテーテルを突っ込み、餌を直接胃に入れる強制給餌を行っていますが、春になり少しずつ気温も上がり自力採食も徐々にするようになってきました。
雄のジュンの状態は安定していて、朝の11時前後には、牛の心臓をミミズ状に切った餌与えています。食べている姿をご覧いただけますので、ぜひ、活発に動くキーウィを夜行性動物舎まで見に来てくださいね。

プクヌイ(雌)
1988年にレインボー スプリングズ動物園で ふ化し、1991年に2 歳8カ月で入園し、飼 育期間は26年2カ月 になります。

 

 

 

ジュン(雄)

ジュン(雄)
1982年にオトロハンガ 動物学協会でふ化し、 ふ化後約半年で入園し ました。飼育期間は32 年11カ月で野生下で の寿命より12年長生き しています。

 

 

 

(辻本 英樹)

 

 


 

ヘビの王様

 

 は虫類生態館(アイファー)に入ってすぐに現れる北米湿地ゾーン。メインはミシシッピワニとワニガメを展示している水槽ですが、傍らに小さな展示ケースがあります。そこには1頭のヘビを展示しています。その名はカリフォルニアキングヘビ(Lampropeltis getlus californiae、略してカリキン。生息地は名前のとおり北アメリカのカリフォルニア州から南はメキシコにまでおよびます。この種はペットとしても大変ポピュラーな種類です。学名にあるLampropeltisには“輝く鱗(うろこ)”という意味があり、鱗(うろこ)の艶は独特な美しさがあります。名前にキング(王様)がついていますが、その由来は“ヘビを食べるヘビ”として知られているからです。ちょっと恐ろしいイメージなのですが、どんなヘビかと申しますと、餌をよく食べて、ウンコもたくさんして、餌を食べるときの動きが雑で・・・とにかくわんぱくなヘビなのです。例えば餌と間違えて世話をする私たち飼育係の指をかみ、離すどころか頑張って飲み込もうとします。毒はありません。攻撃的にかんでくるヘビは他にもいますが、飼育員の指を餌と思ってガンガン向かってきて、パクッと食べようとするヘビはそうそういません。動くものはすべて餌と認識するようですね。もし指をかまれた場合無理やり引っ張って離そうとすると指に刺さった歯が食い込んで傷が深くなってしまいますし、ヘビを傷つけることにもなります。かまれた時は、水の中へつけると諦めて離してくれます。

 そんなわんぱくなカリキンの餌を与える時は、餌のマウスを顔の前に近づけると飛びかかってきます。そうやって食べにくるのはいいのですがかなり高確率で空振りをします。ピンセットで挟んだマウスの前を行ったり来たりして、時には勢い余って自分の胴体にかみついたりもします。ホントにわんぱくって言葉が似合うヘビです。多くのヘビが飼育員を困らせる拒食もほとんど心配ありません。餌を食べてくれず弱ってしまうヘビが多い中で、この安定した食欲を活かして展示場内にマウスを放置してみたところ、舌を出して匂いを嗅ぎながら必死にマウスの位置を探して、見つけた瞬間パクッ!まさに自然界の光景ですね。その姿をお客様と一緒に見ながら実況解説を始めると大変喜んでいただけます。ヘビの習性や個性を知っていただき、ヘビだけでなく他のは虫類にも興味を持ってもらえれば良いと思っています。

 

 

(河合 芳寛)