ロンと小春とそれからわたし その⑤

いろいろ草木も伸び始め、晴れるともう上着がいらないくらいになりました。4月になると怒涛の勢いで季節が進んで行くなあと思う今日この頃です。シリーズも第5弾となりました!まだ続きますよ~

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【ロンと小春の健康管理のために…】

当園のブログでは、いろんな動物の『ハズバンダリートレーニング』というものが紹介されています。『ハズバンダリートレーニング』とは…「動物の自発的な協力のもとで体重測定や採血、検温、爪切りなどの健康管理やケア、治療を行うこと」を言います。では、ジャガー舎の2頭に対してどのようなこと行っているのか紹介したいと思います。

 

【ロンのトレーニング】
ロンは、担当が私に代わってすぐはとても警戒していました。もちろん知らない人がいきなり呼んでも来るはずもなく、「シャー」と警戒させてしまうところからのスタートでした。そのため、ロンに会うときは常にロンの好きなお肉を、私に近づくと与えるところからスタートしました。数日のうちに慣れてくれて、差し出したお肉をテロっと優しくなめ取ってくれるようになりました。2頭ともに共通するトレーニングの目標としては、『だれでもできる』『次の担当に引き継げる』を掲げました。ということで、トレーニングの第1段階は、「私の前に来る」ができたら、「いいね」の合図のホイッスルを「ピッ」と鳴らして、同時にご褒美のお肉を与えるところから始めました。

⇩トレーニング用に細かく切った肉

最初はあんまりホイッスルの意味が伝わらないかなと思っていましたが、3回目のトレーニングの時に「ピッ」の後にお肉が出てくるのでもらえる姿勢で待つ行動が出てきました。第2段階は、「ターゲットタッチ」でした。棒の先にペットボトルをさして白いテープを巻いた特製ターゲットが受け継がれていたので、ロンがそれに口もとを近づけたときに「ピッ」とホイッスルを鳴らしてご褒美を与えるのを繰り返しました。
⇩ターゲット

すると、今度は私がターゲット棒を持って移動するとついてくるようになり、ロンに来てほしい場所まで誘導できるようになりました(第3段階)。

体重測定のトレーニングでは、いきなり本物の体重計は置かず、まずは体重計にかぶせる木のカバーを置いてその上に乗ってもらいました。スムーズに乗れるようになったらカバーの下に体重計の高さの角材を置いて、高さが変わっても落ち着いて乗った状態をキープできるよう練習しました。(第4段階)
⇩木のカバー

採血のトレーニングでは、尾から採血をするため、寝室の柵にある小窓から尾を出せるように、その場所で伏せの姿勢をしてもらうようにしました。柵に体を寄せてもらわないと尾が出ないため、前任者から受け継がれた特製の台を置いて、柵と並行になるような姿勢をとってもらいました。ロンは前任者とトレーニングをしていたこともあり、ここまではスムーズにできるようになりました。

しかし、ここから…尾を出すために尾にフックをひっかけて引っ張りださなければなりません。このときにフックをいきなりひっかけて、とても敏感なロンだからこそ、お尻がぴょんと上がってしまい、「ごめん、やりすぎた…」となってしまいました。そのため、尾が来るところに先にフックを置いておいて、尾が乗ったときにそっと手繰り寄せる方法に変更しました。すると、数回目で尾を手繰り寄せることができるようになりました。もう少しで尾が小窓から出そうというところまでできるようになりました。

⇩小窓からフックを入れて尾を手繰り寄せる様子

【小春のトレーニング】
小春は若いこともあってか、とてもシャキシャキしています。トレーニングの展開も早く、足取りも軽やかで、はじめは私が彼女のスピードについていくのが大変でした。ロン同様、小春もホイッスルとターゲットタッチをあっという間にクリアしました。しかし、ここから難しかったことが2つありました。まず、採血する時の伏せの行動を引き出すのになかなか時間がかかりました。伏せの姿勢を作る簡単な方法に、まずお座りをさせ、そこからターゲットで鼻先を地面に移動させると自然と体が下がり伏せ姿勢になります。(ちなみに、お座りはターゲットを鼻より上にあげた状態で後ろに引いて誘導しました。)ロンはこの方法で伏せになるのですが、小春は身軽でしんどくないのか、鼻先を下げても体を地面につけず、最後はぴょこっとお尻が上がってしまいました!!そこで、どうしようか悩んだ結果、小春がいる寝室の地面は飼育員通路の地面よりも高さがあるため、小春の目線を寝室の地面よりさらに下げてみることにしました。
⇩寝室の地面は私たちの膝くらいの高さがあります。

私は寝室の前でしゃがんだ状態で小春が来るのを待ちました。すると、いつもはうろうろ歩き回るのに、私が下にいるので、小春は自然としゃがみこみ私を覗いたのでした。その時に「ピッ」それだよ正解!とお肉を与えました。それを繰り返すうちに、小春も伏せの姿勢をするといいことがあると覚えてくれました。そこから徐々に私の姿勢を変え、ターゲットでサイン(合図)をつけていき、伏せの姿勢を完成させることができました。

採血のトレーニングでは、ロンは特製の台を使用しましたが、小春は寝室にブロックを置くことで、柵と並行の姿勢をとるように誘導しました。
⇩写真の黄色丸のブロックと柵の間に小春に入ってもらいます。

小春は尾をフックに引っ掛けることはロンほど気にならないようでした。先日、尾の先をフックで手繰り寄せて触れるようになりました!!

もう1つ難しかったのが、体重計にかぶせる板に慣れてもらうことでした。板を寝室に置くと、お転婆小春は、「板=遊び道具!」という風になっていじり始めたので「やばい!壊されてしまう!!」と焦りました。ということで、さらに小さい板切れから慣れる、踏むことにしました。板がある部屋に来ても私のほうに来てターゲットタッチすればご褒美という感じで、小春が私の方に注目してくれるように必死に呼びました。すると、小春は物分かりもいいので、「あ!ターゲットにいかなきゃ」という感じですぐに板切れで遊ぶのをやめてこちらへ来てくれるようになりました。板の大きさを徐々に大きくしていき、その間にも遊びたいと爪を研いだり、齧ったりする行動が出ましたが、きっちり私のほうへ来てくれて、いまでは大きなコンパネに安定して乗るところまで来ることができました。
⇩板で遊ぶ小春

⇩板の上で伏せする小春

【トレーニングのあとは…♡】

トレーニングの際は皆様から見えないところに2頭が行ってしまうので、少しの間お待ちいただくことにはなりますが、このようなことをしているということでした。トレーニングが終わると2頭には展示場で大ご褒美を与えます。お肉のお汁を凍らせた特製アイスです。このとき、楽しみにしているのか2頭とも一目散に来てくれます!彼らがアイスをぺろぺろしている間は、皆様にもゆっくり近くで観察してもらえる時間になると思っています。

⇩飼育員目線

ということで、ロンと小春のハズバンダリートレーニングのことについてお話しました。トレーニングの始めには必ず「ピーーーー」とホイッスルを吹きます。その時に、トレーニングを2頭がしたければ近寄って来て一緒に頑張り、来ないときは「今日はお休みなのね」と、しないときもあります。2頭には協力してもらって練習していますので、無理強いはせず2頭のリズムに合わせて行っています。皆さんがジャガー舎にいらしたときに、寝室でトレーニングしている際は、「ファイト」と心の中で応援してあげてください♡

 

とってもゆったりのんびりしている私のリズムに合わせてくれている2頭に感謝しています。ジャガー担当 河野

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