キュッキュ高知へ

カリフォルニアアシカ

みなさんこんにちは

今日はカリフォルニアアシカ担当飼育員さんから届いたお便りを紹介します


カリフォルニアアシカのキュッキュが12月20日(月)9時に天王寺動物園から高知県立のいち動物公園へ搬出されました。同日の15時頃、無事に先方へ到着しています。

キュッキュは2019年6月4日にミーク(オス)とチョコ(メス)との間に生まれたメスのアシカです。同じ年に生まれたガルーガ(オス)と仲良く過ごす可愛らしい姿を見ることができました。2年後の2021年に入るとツガルが誕生し、キュッキュは遊び相手として一生懸命にお姉さんらしく振舞っていました。

↓生後2日のキュッキュ

さて、キュッキュの過去をご存じの方は多いと思いますが、生後4か月頃、池掃除のための排水作業中に排水溝に流され、一時行方不明になってしまった事件が起こりました。

その原因となった排水溝の蓋は、この事件をきっかけに改善され、その後に生まれたツガルは安全な環境で過ごすことができています。私たちアシカ担当にとってキュッキュは、少しのミスが一つの命を奪うかもしれないことを実感させた象徴的な存在でした。

そのため、個体としてのキュッキュだけでなく、この象徴としての思いも同時に高知県立のいち動物公園にバトンパスしたく搬出に向けた箱入れトレーニングや飼育管理を行いました。

↓箱になれてきたキュッキュ

12月19日にキュッキュを輸送箱に収容しました。トレーニング期間が限られていたため蓋を閉めても落ち着いて居られる状態までは辿り着きませんでした。そのため当日の蓋閉めは一か八かの賭けでもあり緊張感が半端ない状態でした。キュッキュがいつも通りに落ち着いて箱に入り、『今やっ!』と蓋を閉めたときの「よし!!」には達成感と同時に少し寂しさが混じります。トレーニングの成果が出てよかったと安堵しているとその様子を見に来たツガルは何が起きているか分からない様子で輸送箱内を見つめました。そして、キュッキュをアシカ池から一時収容舎へ運びました。「せーのっ」「重いから気を付けて」運ぶためには人力でキュッキュを持ち上げる必要がありますが、手で感じるキュッキュの重さは、健康に育ってくれた証であり、うれしく思いました。

↓様子を見に来たツガル

翌朝キュッキュの健康確認とお別れのために、一時収容舎へ急ぎます。寒くならないように前夜に掛けた毛布を捲るとリラックスした顔でこちらを見てきました。

↓こちらを見るキュッキュ

内部も清潔に保たれていました。輸送箱の破損も無く、健康にも問題がないことを確認すると、出発する時間まで無言で写真を撮ったり、箱の隙間から体をなでたりしながら過ごします。

↓お別れのとき

車の音が近づき、裏門が開くと、キュッキュを輸送する車が進入してきました。頭を仕事モードに切り替え、手際よく出発準備を行います。そして「キュッキュ元気で」と声をかけ、バックドアを閉めると、あっけないほど快調に車は走り去っていきました。

↓行ってらっしゃい

寂しさの余韻を引きずらないところが、動物園の良さでもあります。キュッキュを見届けた後にアシカ池へ行くと、残ったアシカ達が早速元気に私たちを迎え入れてくれました。「さあ、ごはんの時間だよ」と私たちとアシカ達のいつもの日常が流れていきました。

↓ごはんを食べにきたツガル

最後に…

無事にのいち動物公園到着の知らせを受けて、そして“のいち動物公園”での落ち着いたキュッキュの写真を見た瞬間、ようやくホッとした担当者です

キュッキュにはたくさんの苦労をさせてしまいました。私がカリフォルニアアシカを担当して初めて誕生したのがキュッキュでした。長女です。

排水溝に流されてからは、不名誉ながらたくさんのマスコミに取り上げられて有名になりました。反省すべき酷評コメントが溢れる中、『キュッキュ』というネーミングセンスを褒めていただく番組もあったりして少し救われましたが、飼育員として学ぶべきことがとても多く、貴重な経験をさせてくれたキュッキュでした!

高知県への搬出が決まってからは移送箱に入るトレーニングを開始しました。それに対して素晴らしい成果を出してくれるキュッキュでした!とても慎重な性格ですが、最後の最後に、練習通り素直に移送箱に入ってくれたことが何より安堵の瞬間でした。

ここまでこれたのも、一緒にアシカの飼育を担当してくれた仲間と、そして何より温かく見守って頂いたお客様があってこそのことだと思っています!ホンマ感謝です。

今後は安全対策をより一層強化して飼育業務に励みたいと思います!

最後に皆さま!

キュッキュも少し気にしながら、天王寺動物園のアシカたちにも会いに来てくださいね!

おまけ

高知県立のいち動物公園に到着し、のんびりしているキュッキュ

(写真の掲載許可を得ています。)


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